ヨーロッパは2021からnZEBが義務化、2050に80%のエネルギー消費削減を目指すヨーロッパ

ヨーロッパ(EU: 欧州連合)では2021年以降に建てられる住宅はnZEB (nearly Zero Energy Building: 外部からのエネルギーを殆ど必要としない建物)の条件を満たす必要があります。nZEBの義務化は2010年に欧州連合指令により決定され、新築だけでなく既存住宅の省エネ改修の条件も含まれています。nZEBの詳細は各国が自国の気候、建築方法等に合わせて決めています。
基本は、建物の基本性能を改善し暖房負荷を極力減らしたうえで、効率が高い暖房機器によりエネルギー消費をさらに減らす事です。エネルギー消費の一部(50%程度)を太陽光パネル、太陽光集熱装置、ヒートポンプ等でまかない、外部(電力会社やガス会社等)からのエネルギー供給量を大幅に減らします。
欧州連合の目標は、建物関連の一次エネルギー消費を2050年までに80%削減(1990年ベース)し、二酸化炭素排出量を90%削減する事です。この為、nZEBでは暖房エネルギーだけではなく、給湯、冷房、換気、照明にも厳しい基準を設定しています。
EUでの建物のエネルギー性能に関する要件は定期的に見直されるEPBD(Energy Performance of Buildings Directive: 建物のエネルギー性能に関する指令)によって定義されています。

スウェーデンの新築住宅のエネルギー消費は東京の新築より少なく、しかも全館連続暖房

nZEBの年間一次エネルギー消費基準は、家電を除いた合計で45~90kWh/m2(建物面積当り)です。家電の年間一次エネルギー消費が40~50kWh/m2なので年間総一次エネルギー消費は85~140kWh/m2となります。日本の省エネ基準値は東京で186kWh/m2 (部分間歇冷暖房、120m2標準戸建)、 秋田で223kWh/m2 (部分間歇冷暖房)、札幌で349kWh/m2 (全館連続冷暖房)です。
新築の一次エネルギー消費量基準は、最も寒い北欧でさえ東京の部分間歇冷暖房時の基準より少ないのです。

上図は日本とヨーロッパの一次エネルギー消費基準を比較したものです。ヨーロッパでは国によって基準の設定方法が違うため、欧州連合が提唱しているnZEB基準値の最大値を使っています。
東京が含まれる6地域と地中海地域を比較すると、日本のエネルギー消費が2倍以上大きい事が分かります。秋田が含まれる3地域は、ドイツが含まれる中央ヨーロッパの2.5倍となります。日本の部分間歇暖房とヨーロッパの全館連続暖房の比較でです。日本の全館連続暖房と比較した場合はそれぞれ2.1→3.3、2.5→3.7倍になります。
この違いは断熱性能の違いだけが原因ではなく、日本の給湯、換気、照明エネルギー基準も甘いからです。今の一般的な新築であれば、比較的簡単に一次エネルギー誘導基準(基準値の90%)を達成することが出来ます。