EU(ヨーロッパ連合)は京都議定書が締結された1997年頃には既に2050年までに建物のエネルギー消費を大幅に削減する事を決めていました。日本では明確な目標が設定されないまま20年が過ぎ、大きな差が出来ました。

上図はドイツの建物省エネ法令の変遷と単位面積当たりの年間暖房負荷基準を表したものです。1995年から義務化された基準(WSVO1995)の年間暖房負荷は約150kWh/m2で、日本の現行暖房負荷基準(3地域での全館連続暖房)と同じです。当時の断熱性能基準は日本の3地域と同程度だったのです。1990年代には大きな差はありませんでした。但しドイツは1995年に既に義務化し、日本の1999年基準は20年以上義務化も強化もされていません。一方ドイツは2002年、2009年、2016年に基準を強化しました。2021からは一定の創エネも義務化されたため、差はますます大きくなっています。住宅省エネ基準は今後も強化されていきますが、新築に関しては大きな目標を達成したため、既存建物の断熱改修と設備更新に重点が置かれています。新築建物の性能では大きな差が出来てしまいましたが、1980年以前の建物では違いはありません。日本でもヨーロッパでもほとんどが無断熱に近いのです。唯一の例外は北欧です。スウェーデンでは1946から先進的な断熱基準の導入が始まりました。
欧州連合は2050年までに建物関連のエネルギー需要を80%削減するため、あと30年で既存建物の断熱・設備改修を終わらせる必要があります。欧州連合は目標達成のため、住宅ストックの3%と言う意欲的な年間改修率を目指しています。屋根、床、窓、設備の改修方法は確立されていますが外壁はまだ十分とは言えません。

最も重要な断熱性能基準: 欧米に大きく遅れた日本

ヨーロッパの新築住宅は日本の新築住宅と比べ、2倍以上の断熱性能を持っています。暖房負荷が高い全館連続暖房をしながらエネルギー消費を極力削減するためです。高い断熱性能により、日本の部分間歇暖房以下の暖房負荷で全館連続暖房を実現しています。

日本とヨーロッパの新築断熱性能の比較

上図は日本とヨーロッパの断熱基準(平均熱還流率)を比較したものです。大きな違いがある事が分かります。東京とローマでは約2.3倍、秋田とハンブルグでは約2.1倍の違いです。アメリカの断熱基準もヨーロッパとそれ程変わりません。この違いは年々拡大しています。日本の基準が1999年から変わっていないからです。ヨーロッパでは5~10年毎に性能基準が厳しくされ、この20年で大きな差が出来てしまいました。ベルギーの2007年までの基準は、日本の1999年基準より甘かったのです。20年前のヨーロッパでは、国ごとに大きな違いがありましたが、20年かけて、後れていた国がスウェーデンやドイツなどに追いついたと言う事です。2021年からのnZEB義務化と言う明確な目標があったからです。
国の基準は大きく後れを取ってしまいましたが、一般財団法人HEAT20によるG2と言う独自の基準があります。省エネ基準住宅を、部分間歇暖房した場合の暖房負荷で、全館連続暖房が可能になる性能を推奨しています。上図から分かるように、平均熱還流率はヨーロッパの現行基準とほぼ同じです。ヨーロッパではnZEBの義務化開始により、既存建物改修に重点が置かれていますが、今後も新築の性能基準を引き上げていく予定です。フランスとイギリスは2025年に義務化する新しい断熱性能基準を既に公表しています。