住宅の基本性能で最も進んでいる地域はヨーロッパです

第二次世界大戦直後、北欧で始まった住宅の高性能化は、石油危機以降ドイツに引き継がれこの数十年で大きく進歩しました。

壁、屋根(天井)の高断熱化、気密性能の強化に続いて窓の高断熱化が進められ、数十年前には想像できなかった高性能住宅が義務化され、普通に建てられる様になっています。高性能住宅は今や北欧、ドイツ、オーストリアなどの先進地域だけでなく、フランス、イタリア、スペインでも一般的になっています。

日本の住宅性能がこの数十年停滞する間に、ヨーロッパは大きく前進しました。「高気密高断熱化によって住環境を改善しながらエネルギー消費を劇的に削減する」と言う明確な目標に基づいて、国民、業界、各国政府、EU(ヨーロッパ連合)が協力してきた成果です。

日本と欧米は気候が違うと言う意見を良く耳にします。北海道と北欧、東北とドイツ、本州(太平洋沿岸)とイタリア・スペインはそれぞれ多くの共通点があります。緯度の違いによる日射量の違いや湿度が高い夏と言った相違点もありますが、それぞれ多様な気候をもつ日本とヨーロッパを単純に二つの地域として比較するべきではありません。

ルームエアコンで代表される住宅設備の発展に比べ、日本の住宅の基本性能は十分に発展できませんでした。中小工務店・ハウスメーカーが多く、国、自治体が本腰を入れなかった為、設備に頼った住環境改善が常識となり、いまだ変わっていません。

日本の住宅が足踏みしている間にヨーロッパの新築住宅の性能は劇的に進歩しました。ドイツの断熱基準は25年で約2倍強化されています。高断熱住宅に大きな影響を及ぼす気密性能や機械換気に関しても厳しい基準が設けられ、義務化されています。

2021年からはnZEB(nearly Zero Energy Building: 冷暖房、給湯、照明のエネルギー需要を極力減らした建物)がEU全域で義務化されました。

冬の日射量が少なく、気温が低いヨーロッパと比べ、日本でのnZEBの実現は難しくありません。

障害はコストや技術でなく、変化を避ける姿勢です。今まで通りの家を建てたら、どんなに地震に強くても、将来の生活の質やライフスタイルに合わなってしまいます。