いまだに3S(狭い、寒い、湿気る)から抜け出せない日本の家
欧米や北海道の方が東京に来ると、家の寒さに驚きます。世界有数の人口密集地で、家が狭いのは仕方ありません。しかし、日射が多く温暖な冬に恵まれながら、何故多くの家は寒く、湿気るのでしょうか。数十年前の家ならまだしも、新築の家でも寒い廊下や水場は当たり前です。
断熱性能が良くなり、床暖房、浴室暖房、温便座など多くの設備や機器にお金を使っているのに、大きな改善はありません。住宅設備の省エネ性能は良くなっているのに、エネルギー消費は減っていません。
原因は日本独特の「部分間歇暖房」にあります。居室を在室時だけ暖房する事です。断熱性能が低かった時には、合理的な方式でした。しかし、より快適な住環境を実現するには、既に限界に達しています。部分間歇暖房を続けながら、断熱性能を多少改善し、より多くの設備や機器を導入する、今のやり方を見直す時が来ています。
これからは、断熱性能の改善に重点を置き、暖房負荷を増やさずに全館連続暖房を実現することをお勧めします。
家の一部や押入れが湿気るのは、温度が低いからです。家中の温度が同じなら、湿気ることはありません。暖房空間から廊下や水場を隔離する限り、これら非居住空間は寒いままです。壁や扉を減らし、開放的な間取りを採用すると、エアコン一台で、家全体を暖めることが可能になります。空間に広がりが出来、寒さと湿気の問題も解消されます。
全館連続暖房には、高価で大きな設備と、高い暖房費が必要と思うのが一般的です。北欧住宅の様に、厚さ30㎝近い断熱材が必要で、現実的でないと思うかもしれません。冬が温暖で、日射が多い関東以西の太平洋沿岸地域では、それ程難しくありません。新築住宅の断熱性能を2倍にすれば、暖房費を増やすことなく、全館連続暖房を実現出来ます。断熱性能の改善は壁や屋根の厚さを2倍にするのでなく、高性能樹脂枠窓と熱交換器型換気設備で実現します。
一般的な新築住宅を全館連続暖房した場合、約64%の熱は窓(45%)と換気(19%)から失われます。窓と換気を見直すことで、この部分の熱損失を75%削減し、家全体の熱損失を半分にします(64% x 75% = 48%)。壁、屋根、床の断熱性能改善では、頑張っても、25% しか削減できません。なぜなら壁、屋根、床からの熱損失は全体の36%でしかないからです。壁、屋根、床からの熱損失を70%削減したとしても、多くの熱が窓と換気から失われるのです。
ちなみに断熱性能を2倍にすると、暖房エネルギーは1/2ではなく、約1/3に減ります。
連続暖房で、床、壁、天井温度が安定するため、床暖房無しでも快適です。浴室暖房や温便座も必要ありません。より快適で省エネな家が欲しい場合は、壁、屋根、床の断熱性能を高める事をお勧めします。窓以外の外皮断熱性能を50%改善すればほぼ無暖房となります。
断熱性能が高い家は、夏は熱いと思うかもしれません。決して熱くありません。屋根の断熱は特に有効です。太陽光で熱せられた屋根からの熱侵入を防いでくれます。暖房に比べて効果は小さいながら、断熱性能が高い方が冷房負荷は小さくなります。暖房と同様、ルームエアコン1台で全館連続冷房も可能です。遮光対策をすれば、部分間歇冷房より少ない冷房費で全館連続冷房をする事が出来ます。
にわかに信じ難いと思う方は多いと思います。既成概念を捨て、歴史的な背景や今ある技術を知ることによって納得してもらえると思います。