北欧、英国以外のヨーロッパではシャッターが多くの戸建てと5~6階建までの集合住宅に取り付けられています。地上階だけではなく、すべての階の殆どの窓につけられています。

ドイツ式樹脂枠窓用シャッター

上の写真のようにヨーロッパでは殆どが巻上式シャッターです。スラットの間隔を少し離し、プライバシーを守りながら、換気・採光ができるようになっています。

シャッター閉
シャッター換気

スラットはアルミ製で中は発泡樹脂で充填されています。この構造によって雨が当たった時の音を減らしています。

シャッターフィン断面図

もう一つの特徴は室内側にあるベルトを操作して開閉する機構です。操作はロールシェードの操作と同じ感覚です。
モーター駆動、センサーやタイマーを使った自動制御のオプションもありますが、停電時も操作できるため、多くの人は基本仕様のベルト駆動で十分と思うのではないでしょうか。国内メーカーも通気孔付きシャッターを導入していますが、手動ベルト駆動は提供していません。

シャッター巻上機構

国々が地続きのヨーロッパでは防犯の為という目的がありますが、遮光もシャッターに求められる大きな役割です。夏の日差しが強い南ヨーロッパでは、伝統的に雨戸やシャッターが遮光の目的で使われています。昼間はシャッターを閉め、太陽光による室内温度の上昇を防いでいる家や集合住宅を多く見かけます。
雨戸やシャッターを取付けない家が一時期増えましたが、最近は遮光の目的で外ブラインド、外シェード、シャッターを取付ける家が増えています。気候温暖化で、西ヨーロッパでも夏の遮光が重要になってきているのです。
ドイツの窓が内倒し、内開きなのは、外開式雨戸と組み合わせる場合が多かったからです。通気が可能なルーバー式の雨戸も多くあります。内倒し、内開き窓は、外側にシャッターや網戸を取付けるうえで合理的なデザインです。

ドイツの昔の雨戸
ドイツ、エスリンゲンにある13世紀の建物。上げ下げ式の珍しい雨戸。上階は外開き式。
ドイツ ルーバー式雨戸
テラスハウスのルーバー式外開き雨戸。

伝統的な日本建築は、深い軒と簾(すだれ)や葦簀(よしず)を組み合わせ、巧みに夏の太陽と付き合っていました。雨戸は台風対策や防犯の為に使われていました。遮光と通風の機能を兼ね備えたルーバー式雨戸が一時はやりましたが、最近の新築には殆ど見かけません。
深い軒、引違い窓、スライド式雨戸、簾(すだれ)の組み合わせは合理的です。しかし最近の住宅からは軒が消え、簾(すだれ)を取付ける窓額も排除されてしまいました。一昔前の日本家屋では窓の殆どが引違い式でしたが、最近は大きな窓以外は、すべり出しや縦すべり出しの開閉式窓となっています。大きな窓でもFIX窓の使用が増えています。外開き式の窓やFIX窓には雨戸を取付けることは出来ません。簾をつける事も難しいです。

伝統的な簾
軒下には簾を吊るす桟があり、深い軒と簾を組み合わせて夏の太陽に対処していました。
北欧住宅に簾をつけた例
軒下には簾を吊るす桟があり、深い軒と簾を組み合わせて夏の太陽に対処していました。

防犯上、シャッターを取付ける家は増えていますが、1階だけに取り付ける場合が多いです。外開きが多い国産開き窓には、一体式シャッターは提供されていません。後付けのシャッターを取付けるにしても、室内から操作できる電動式が必要になり、コストがかさみます。たとえ電動シャッターを付けたとしても、シャッターを閉じた状態での換気は出来ません。同様に外付けブラインドや簾をつける事も出来ません。
最近の夏を、遮光と換気だけで乗り越えるのは難しいですが、冷房負荷を減らすためにも遮光は重要です。災害時の停電に備える必要もあります。開き窓やFIX窓をやめ、引違い窓に戻す方法もありますが、断熱性能や気密性能を犠牲にすることになります。
2階の西面、東面に、大きなFIX窓を見かけるようになりました。1階であれば葦簀(よしず)などで遮光できますが、2階ではそれすらも出来ません。多くの家が夏の太陽光に苦しめられています。窓の室内側に遮光カーテンをつけた家を見かけますが、室内側での遮光は家の加熱を抑えることは殆どできません。
軒が効かない東西面の窓には通気口付きシャッターが大きな効果を発揮します。
国産の採光式電気開閉式シャッターも存在しますが、全ての窓に取り付けると目が飛び出るようなコストになります。
ヨーロッパのシャッターはベーシックなものでも室内から開け閉めが出来、採光・換気機能も兼ね備えていて、価格も良心的です。
ヨーロッパではシャッターを室内から開け閉めできるので、カーテンを使わない家も多くあります。
ヨーロッパの窓は基準及び実性能とも、日本より高いレベルにありますが、シャッターに関しては日本ほど高くありません。
窓を強風から守る事がシャッターの重要な役割ですが、台風が無いヨーロッパはそれほど高い耐風圧性を必要としていません。従って基準自体がそれ程高くないのです。ヨーロッパの窓の耐風圧性能が高いのは、気密性能を高くした事の副産物です。シャッターには高い気密性が必要ないので、耐風圧性能はそれ程高くないのです。
シャッター幅が1.1m以下であれば、日本で標準的なS3相当(負圧800Pa, 風速51m)の性能となります。幅1間の窓の耐風圧性能は450Pa, 風速38m程度となります。

シャッターの耐風圧性能

日本製シャッターの耐風圧性能が高い理由はスラットがガイドから外れないようにする耐風フックがあるからです。スラット自体の強度にはそれ程大きな違いはありません。

日本のシャッターの強化構造
ドイツのおしゃれな雨戸
日本ではあまり使われなくなったスライディング式雨戸が、ドイツでは意匠性が評価されています。窓はドレーキップ窓です。
ドイツの換気式雨戸
遮光と通気用のスライディング式雨戸です。