窓と窓枠が重要なわけ –  想像以上の熱損失、結露、床温度低下

「家の熱は50~60%が窓から逃げる」とよく言われるようになりました。窓の断熱性が低いのが原因ですが、ようやく躯体(外壁、屋根(天井)、床)の断熱性が改善された結果でもあります。

東京で比較的断熱性能が高い家(屋根・天井: 高性能GW200mm, 外壁・ 床: 高性能GW105mm) に:
①    2層ガラス入りのアルミ樹脂複合枠窓を使った場合、窓から60%の熱が損失します。
②    アルゴンガス入りLow-E 2層ガラスに変えた場合、窓からの損失は50% に改善します。改善したとは言え、外皮面積の11%を占める窓から、熱の半分が逃げているのです。大きな要因は窓枠です。窓からの熱損失の64%は窓枠からです。窓面積の20%を占める窓枠から2/3近くの熱が逃げていることになります。
③    窓枠をアルミ樹脂複合枠から樹脂に変えると、窓枠からの熱損失を40%~60%減らす事ができます。国産2層ガラス用樹脂枠は40%程度の改善を達成しています。ドイツ製の樹脂枠はもっと優秀で、60%程度の改善を達成しています。国産樹脂枠窓の場合、窓からの熱損失は全体の41%になります。
④    最新の樹脂枠にアルゴンガス入りLow-E 3層ガラスを組み合わせると、窓からの熱損出を全体の50-60%から25%に減らす事が出来ます。窓だけの熱損失を見ると、面積が1/3の窓枠から1/2の熱が損失します。
窓枠からの熱損出は暖房エネルギー(暖房費)に大きく影響するだけでなく、結露や床の温度低下を引き起こします。
室内温度20℃、屋外温度0℃の環境で、アルミ樹脂複合枠窓とドイツ型樹脂枠窓(System 88)の内面温度シミュレーションを行います。アルミ樹脂複合枠窓の最低温度は5℃以下となってしまいます。室内温度:20℃、相対湿度50%の場合、結露は9.4℃で起きます。ドイツ型樹脂枠窓の最低内面温度は16℃です。アルミ樹脂複合枠窓は、以前のアルミ枠窓より良くなりましたが、まだ十分ではありません。

温度分布図はLBNL WINDOWとTHERMと言うシミュレーションソフトによって計算したものです。
このソフトウェアは米国エネルギー省がスポンサーしていて、無料で使用が可能となっています。

ドイツでは「室内に結露が起きてはいけない」と言う法律があり、窓に関しては外気温度:-5℃、室内温度:20℃で、窓の最低内面温度が12.3℃以上と言う決まりです。室内湿度が60%以下なら結露しないという事です。
結露→カビ→ダニ→アレルギーと言う悪循環を断ち切る為にも窓枠は重要な要素です。
暖房時に室内湿度を上げようとすると、より多くの結露が起きるという悪循環になります。唯一の解決方法は、窓枠の断熱性能を上げるという事です。
家の断熱性能の改善が議論される場合、多くの人達は経済性の比較だけで判断しようとします。定量化が難しい住環境改善の価値も考慮すべきです。
床暖房の需要は年々増えていますが経済性という観点からは正当化できるません。床暖房は、心地よい環境を提供する「贅沢」だからこそ多くの人に支持されています。
温かい床と同様、湿気なく、結露しない、カビが生えない家の価値を考えるべきではないでしょうか。

熱損失はLBNL WINDOWとTHERMと言うシミュレーションソフトによって計算したものです。

経済的に手に入る世界最高水準の窓の性能は0.8w/m2℃程度です。それでも単位面積当たりの熱損失は日本家屋の壁、屋根、床に比べ2倍です。
理想的には窓が壁と同じ程度の断熱性能を持つべきですが、まだ技術的、経済的に達成できていません。