夏の冷房方法: 部分間歇冷房か全館連続冷房か
窓の断熱性能を上げ、開放的な間取りにすれば、ルームエアコン1台で家全体を暖めることが出来る事を示してきました。夏場に家が暑くなる最大の要因は、窓からの太陽光熱取得であることを示しました。
開放的な間取りで、家の冷房を効果的に出来るのでしょうか。
暖房と同様、全館連続冷房をお勧めします。遮光をすれば、部分間歇冷房以下の冷房負荷で全館連続冷房が可能です。
窓をアルミ樹脂枠から高性能樹脂枠に変更すると冷房負荷は減少します。高性能樹脂枠はアルミ樹脂枠と比べが太いため、ガラス面積が少なく、室内に入る太陽光が若干減ります。窓枠の断熱性能が高いため、窓枠からの熱の侵入が減ります。
全熱交換機で冷房負荷はさらに減少します。換気によって外から入ってくる水蒸気を減らしてくれるからです。エアコンの除湿負荷が減り、冷房負荷が減るのです。遮光、高性能樹脂枠窓と全熱交換機によって、全館連続冷房を部分間歇冷房以下の冷房負荷で実現できます。
下図のシミュレーションはesp-rによって行われています。
全館連続冷房の長所
比較的高い室温で心地よい室内環境を実現できます
部分間歇冷房では冷房開始時に部屋の温度を急激に冷やす必要があります。内壁温度が高い為、体感温度を下げるためです。暖房と同様、壁面温度と空気温度に差があると心地良くなく、冷房病の原因にもなります。
全館連続暖房では内壁温度が安定して低いため、空気温度は高めに設定しながら心地良い室内環境を実現できます。
エアコン内のカビの繁殖を抑制できます
冷房運転中のエアコン内部温度は約15℃の為、結露水で濡れています。一旦運転を停止すると、たちまち内部温度は30℃以上に上がり、湿度は100%です。カビの繁殖には最高の条件です(カビは温度25℃以上、湿度80%以上の環境で急激に繁殖します)。エアコン運転を再開する頃にはある程度乾燥しますが、カビの胞子が出来ているかもしれません。エアコンをつけたときにカビ臭くなるのはこの為です。家中のエアコンを一日数回、つけたり消したりすることで、カビが繁殖しやすくしているのです。
連続運転では、エアコン内部は常時結露していますが、温度も常に15℃程度なので、カビの成長は抑制されます。
居室以外の空間の湿度を下げる事が出来ます
部分間歇冷房では、廊下、洗面所や和室の窓を開け、風通しを確保します。湿度が高い外気が入り込むため、湿気がたまり、カビが繁殖しやすくなります。全館連続冷房では、すべての空間が冷房、除湿されている為、カビの繁殖を抑制することが出来ます。
夏場にも全熱交換器型換気は有効です – 湿度を下げ、冷房負荷を削減します
高温以上に不快なのが湿度です。8月の東京では、夜中でも温度30℃弱、湿度80%の夜が続きます。熱中症防止、カビ抑制のためにも温度と湿度を下げる必要があります。温度28℃以下、湿度60%以下にすべきです(28℃は部屋の内壁温度と空気温度の平均です)。室温をそれ程下げずに湿度を下げた方がより多くの人が快適に過ごせます。湿度が低ければ暑がりの人は発汗によって体温を下げる事が出来るからです。湿度が高いと室温を下げるしかなく、寒がりの人が不快になります。
エアコンは温度を下げると同時に除湿もしていますが、湿度を60%以下に保つことは簡単ではありません。エアコンの除湿量は運転出力に比例します。太陽光の侵入を減らし、冷房負荷を小さくすると、除湿量が減り、湿度を60%以下にするのは難しくなります。除湿を十分しようとすると、室温が下がりすぎます。温度を下げずに除湿するエアコンもありますが、冷やした空気を再度暖めるので、エアコンの運転効率が下がり電力消費が増えてしまいます。
充分な除湿が難しいのは、想像以上に水蒸気の発生と、外部からの取り込みが多いからです。換気だけで一時間に0.7リットルの水蒸気が家に入ってきます。その上、家事、風呂、調理、呼吸、発汗によって一時間に平均0.2~0.4リットルの水蒸気が発生します。両方を合わせると一時間に最大1.1リットルの水分となります。
冷房負荷が大きい昼間は1時間当たり1.1リットルの除湿は可能ですが、冷房負荷が半減する夜は難しくなり、湿度が上がります。第3種換気では、湿度を安定的に60%にするのが難しいのが実情です。全熱交換器を使用すると、換気による水蒸気の流入を75%削減でき、1時間当たりの水分供給量は1.1リットルから0.6リットルに減少します。熱交換器型換気によって湿度を安定的に55%程度に保つことが可能になるのです。除湿量が減ると冷房負荷も減ります。
室内温度28℃、相対湿度60%を達成するのに必要な除湿量を計算します。
人の活動による水分供給は冬場に於いては1日5リットルと想定しましたが、夏場は人の発汗が多いので10リットルとします。1日の平均外気温度は29℃、湿度は75%とします。
29℃で湿度75%の空気には1㎥あたり19.0gの水蒸気が含まれています。一方28℃で湿度60%の空気には14.3gの水蒸気が含まれています。第三種換気により、1時間に家の容積の50%の空気を入れ替えると換気量は150㎥/hとなります。
外から19.0g/㎥の空気が入り14.3g/㎥の空気が出るため、1㎥の換気を行うと室内に4.7gの水蒸気が増えます(19.0g/㎥-14.3g/㎥=4.7g/㎥)。1時間に150㎥の換気を行っているので、水蒸気は705g増えます(4.7g/㎥ x 150㎥/h = 705g/h)。人の活動による水分供給は1日10リットルなので1時間当たり0.42リットル(420g)です。二つを足すと、1,125g又は1.125リットルです。