必要無かったもの
天井エアコン
モデルハウスの格好良さにあこがれ、同じタイプの天井エアコンを合計6台付けました。選択理由は100%見た目でした。実際に使っているのは暖房時は1階和室の1台、冷房時は2階ファミリールームの1台です。真夏には子供部屋のエアコンを夜7時頃から1深夜頃まで運転します。
壁付けのルームエアコン3台で十分だったと思います。天井エアコンは意匠的に魅力的ですが、壁掛エアコンでも目立たない様に設置する事は出来ます。壁掛けタイプの方が清掃がしやすく、価格も低いので、あえて天井付けは必要なかったと思います。
2階の天井エアコンは冷房時、小屋裏(天井裏)で結露を起こすと言う問題があります。天井裏の断熱材が厚ければ熱い程、結露しやすくなります。下図は結露の仕組みを説明したものです。天井エアコンの外側には暑さ15㎜程度のウレタン断熱材が張ってあります。天井エアコンの周りには厚い吹込み断熱材がある為、ウレタン断熱材の外側の温度は15℃程度です。吹込み断熱材は透湿性が高い為、小屋裏の水蒸気がこの冷たい面まで移動し、結露するのです。夏のとある日に突然エアコンから水が落ち始めます。防湿シートがの上に溜まった結露水が隙間から落ち始めます。エアコンの外側の断熱材を大幅に厚くして、水蒸気が親友出来ないようにする以外解決方法はありません。我が家では厚さ100㎜の発泡系断熱材をエアコンの外側に張り、その外側に念の為、防湿シートを張りました。室内機を交換した場合はまた同じ作業をする必要があります。ここまでして天井エアコンにこだわる必要は無いと言うのが結論です。
浴室暖房、乾燥機
我が家では全く使っていません。全館連続暖房なので浴室は常時20~22℃です。梅雨~夏以外は、浴室の扉を開け乾燥しています。室内で洗濯物を乾燥する場合は室内に干します。
殆どの浴室暖房・乾燥機は電熱線で空気を温める機器です。大量の電気を使って浴室の空気を温め、水蒸気を多く含んだ空気を外に捨てます。大切な水蒸気と熱を外に捨てるだけでなく、電熱線と言う最も効率が悪い方法を使って空気を温める装置です。
最近は効率が改善したヒートポンプ式の物も出ているようですが、全館連続暖房をしていれば、そもそもこの様な機器は必要ありません。
タオルウオーマー
数年に一度使っている程度です。洗面所は暖かいので必要ありません。部分間歇暖房の経験しかなかったので、新築当時は必要と思いました。かっこよいタオル掛けとして使っています。
タンク・洗浄便座一体型トイレ
築12年目頃に洗浄便座の洗浄ノズルから水がポタポタ漏れるようになりました。原因を調べたところ、電気によって作動するバルブのゴムパッキング(シール)が劣化していました。このパッキングは直径3㎝で、大きさ的にはホームセンターに売っている蛇口のパッキングと変わりません。メーカーに問い合わせたところ、修理部品は既に製造中止になっていて、一体化しているタンク・便座を交換か、全部交換と言う事でした。ちなみにタンク・便座は28万円と言話でした。この時は運よく、修理センターに直接電話したら、修理部品が手元にあり、届けてもらいました(下の写真右上)。実際に交換が必要だったのは電磁バルブのゴムパッキングでした。水道蛇口と一緒でゴムパッキングは必ず劣化し、交換が必要なのは明らかなのに、この部品の為にトイレ全体を取り換えなくてはいけないとは切ない事です。
最近メーカーに修理部品の提供期間に関する問い合わせをしました。タンク・便座一体型の場合は「目標」が15年、便座分離型の場合は12年と言う回答でした。しかしあくまでも目標との事です。最低保証期間に関しては明確な答えはありませんでした。代替タンク・便座を提供しているようで、価格はネットで調べたところ7~8万円程です。また10数年後に同じ問題が起きると思うと、分離型が合理的と言う結論です。
我が家では同じ様な故障で洗濯機を2回買い替えています。電磁バルブのゴムパッキングが製品寿命を決定しているようです。自動車に例えるなら、タイヤがすり減ったら車を買い替える様な感じです。
有って良かった物
食洗器
ヨーロッパ製の大型食洗器を毎日使っています。購入後15年目で主にパッキングの取替をするメンテナンスをした以外は故障知らずです。高温の水を使う事で、食器は少量の水で奇麗になります。電気ヒーターで水を温めるため1回の消費電力は1.5kWです。電力消費が高い事が玉に瑕です。深夜電力を使っているので運転費は安いのですが、電力消費の面では罪悪感があります。
まだ当分は使えそうです。出来ればメンテしながら30年は使いたいと思っています。
メーカーに今後の修理の可能性を問い合わせしました。我が家の食洗器は2002年に購入したものですが、2006年に廃盤となり、廃盤後15年間修理部品を提供するとの事です。従って、来年(2022年)から修理部品は手に入らなくなる可能性があるようです。2017年に交換したパッキングが後10年持ち、電気部品が壊れなければ30年持つかもしれません。
ヨーロッパでは食洗器の設計寿命は20年で、修理部品は廃盤後15年提供するのが一般的な様です。モデルチェンジは通常5年に一度と言う事でした。最新の機種は20年前と比べ水の使用量が30~40%削減され、電力消費は30%程度改善されているようです。計算したところ、最新機種のエネルギー消費量(温暖化ガス排出量)は温水を使った手洗いより多少良いようです。罪悪感は多少和らぐかもしれません。
有ったら良かったもの
設備クローゼット、配管スペース
多くの家同様、我が家には点検、メンテン、取替を容易にしてくれる設備クローゼット、配管スペースがありません。新築時には想像もできませんでしたし、関心もありませんでした。興味も時間も間取りや意匠的な事に偏っていました。
今考えると、意匠的な事は住み始めてから決めればよい事が多いのです。配管、配線は建てる前に十分考え、決める必要があります。
2階に設備 クローゼット を作れば2階と1階をつなぐ配管、配線スペースにもなります。2階の設備ロッカーの真下に1階クローゼットを作ればダクト、配管、配線の取替もしやすくなります。それ程スペースが必要ないと分かれば、一部を収納スペースとして活用できます。
手に入らないけどほしい物
梅雨時に省エネで、冷やさず除湿出来るエアコン
「エネルギー効率が良くなった再熱除湿機能が付いたエアコンが有るじゃないか」と言う意見もあると思います。
真夏より嫌なのが梅雨の後半です。我が家のエアコンで除湿すると、湿度だけでなく、室温も下がてしまいます。室内が多少寒くなっても除湿を優先したい私と、それでは寒過ぎると感じる妻がいます。この時期の空調は夫婦の意見が合わず、ある年はエアコンを点けず高湿度を我慢し、ある年はエアコンを点け、寒さを我慢します。
再熱除湿は冷えた空気を電熱線ヒーターで暖める方式から、室外機から外へ捨てられる熱の一部を室内に戻す方式になり、それなりに省エネが進んでいると理解しています。
H社のカタログに再熱除湿のエネルギー消費が記載されています。
外気温: 24℃、 外気 湿度: 80% (絶対湿度: 17.4g/m3)、室内温度: 24℃、 室内湿度: 60% (絶対湿度: 13.1g/m3)
除湿量が1.2リットル/時の時、電力消費は600Wとの事です。
C社は同じ屋外、室内条件で再熱除湿運転時、除湿量が 0.45リットル/時の時、電力消費は280Wとの事です。 C社の同じ製品を再熱無しの「強」除湿で運転した場合、除湿量が 1.0リットル/時の時、電力消費は320Wです(下図の①エアコン冷房時を参照願います)。除湿量は122%増えるのに、消費電力は14%しか増えません。 屋外機から外に捨てる熱を室内にもっと効率よく戻すことが出来れば、再熱除湿時の消費電力は殆ど変わらないはずですが、C社の資料を見る限りまだまだ改善の余地があると言う事です。 再熱無しの「強」除湿で運転した 時の室内機吹き出し温度は10℃なので、家は相当冷やされてしまいます。
再熱除湿運転時の除湿量は通常の冷房運転と比べ、大幅に減ってしまいます。熱交換器の半分が再熱用に使われるからです(下図: ③凝縮熱使用再熱除湿を参照願います)。1台のエアコンで除湿と再熱をする事の限界です。冷たい熱交換器と温かい熱交換器が隣同士になっている為、お互いに影響し合い、除湿性能も落ちてしまいます。
1台の屋外機に複数台の室内機を接続するマルチエアコンだったら、2階の室内機を除湿用に使い、1階の室内機を再熱用に使えるはずです。1階の室内機が屋外機に代わって熱を出すのです。2階の室内機から出る冷たい空気は1階に落ち、1階の室内機から出る温かい空気は2階に上昇します。開放的な間取りであれば、家の中に空気循環が出来、空気が混ざり合ってくれます。
この様な機能を持ったマルチエアコンは家庭用にはありませんが、業務用には存在します(M社)。
開放的な高気密高断熱住宅ではエアコン1台で全館連続冷暖房が可能である事を説明してきました。この時、1階に暖房用、2階に冷房用のエアコンを設置しますが、通常使われているのは何れかの1台です。湿度だけを下げたい梅雨時には、2階を除湿用、1階を再熱用に使えると言う事です。業務用にはこの様な製品が既に存在しているので決して難しくないはずです。
梅雨を快適に過ごせる様にする為に、是非とも考慮してもらいたい機能です。
エアコン(ヒートポンプ)のエネルギー消費
基礎知識
水蒸気(気体)が水(液体)になる時に出すエネルギー: 0.625wh/g
空気の体積比熱(1m3の空気を1℃温めるの必要なエネルギー): 0.324wh/m3/℃
室内温度: 24℃、 室内湿度: 60% の空気1m3に含まれている水蒸気: 13.1g
室内温度: 10℃、 室内湿度: 100% の空気1m3に含まれている水蒸気: 9.4g
簡単な例(C社の強除湿)
温度: 24℃、 湿度: 60% の空気1m3 をエアコンで10℃に冷やすと、3.7g(13.1g – 9.4g = 3.7g)の水蒸気が結露します。C社の例の様に1時間に1リットル(1,000g)の除湿には約270m3(1,000 / 3.7 = 270)の空気を10℃に冷やす必要があります。
1gの水蒸気が液化すると0.625whの熱エネルギーを出すので、1,000gの場合は625whの熱エネルギーを出します。
同時に270m3の空気を24℃から10℃に冷やすので、1,225wh(270m3 x (24℃ – 10℃) x 0.324wh/m3/℃ = 1,225wh)の熱エネルギを奪う必要があります。
エアコンは潜熱(625wh)と顕熱(1,225wh)の合計: 1,850whの熱を奪う(冷やす)必要があります。
実際の消費電力は320wなので、この時のエアコンの効率(COP) は5.78 (1,850 / 320 = 5.78)と言う事です。
電熱ヒーターを使った再熱除湿(下図の②電熱線式再熱除湿時を参照)
除湿だけして、温度を下げない場合は、空気を温めなおす(再熱)必要があります。古い機種は電気ヒーターで再熱していました。再熱時の消費電力は、1,225whとなり、合計消費電力は1,545wh (320wh + 1,225wh = 1,545wh)となります。
電気ヒーターの代りに別のエアコンで暖房した場合は、暖房用に212wh (1,225wh / 5.78 = 212wh)のエネルギーが必要です。除湿と合わせると492wh (280wh + 212wh = 492wh)となります。
この時、除湿用のエアコン室外機からは温かい空気が出され、再熱用のエアコン屋外機からは冷たい空気が出されます。
凝縮熱を使って再加熱 (下図の③凝縮熱使用再熱除湿時を参照)
凝縮熱を使って再熱する場合除湿用のエアコン室外機から出る熱を、室内に戻すことが出来れば再熱に使うエアコンは必要無くなり、消費電力は320whに近づきます。この320whの内212whは空気温度を下げる事に使われています。除湿に使われるエネルギー(電力)は108whです。工夫すれば320whでなく、108whに近づける事も可能です。
熱交換器を使って再加熱 (下図の④熱交換器使用再熱除湿時を参照)
熱交換器でエアコンから出る冷たい空気(10℃)を使ってエアコンに入る室内茎(24℃)を冷やす方法です。熱交換率が80%の場合、エアコンに入る空気を24℃から12.8℃に下げ、エアコンから出る冷たい空気は10℃から21.2℃に温めることが出来ます。エアコンの仕事は、24℃から10℃に下げるのでなく、12.8℃から10℃に下げるだけとなり,消費電力が大幅に減るだけでなく、室温の低下も大幅に減ります。この例は省エネの限界を理解していただくためです。除湿専用機であればこの方法は可能ですが、ルームエアコンでは難しいです。
性能が良い除湿器を使用 (下図の⑤除湿器使用再熱除湿時を参照)
除湿(専用)機は最も効率的な仕組の一つです。蒸発器で冷やされ、除湿した空気をそのまま凝縮器に送り、コンプレッサーで圧縮され、熱くなった冷媒を冷やします。空気が冷たければ冷たい程、除湿器の効率は良くなります。蒸発器で冷やされた空気は、凝縮器で暖められ、室内に戻ります。結果的に除湿器は除湿だけの仕事しかしないので、消費電力を極力減らすことが出来ます。
家庭用の除湿器の電力消費は、凝縮熱を使用した再熱除湿のエアコンと同程度です。本来は効率をもっと良くできるはずですが、廉価な機器の為、それ程効率が上がらないのです。
仮にメーカーが高性能な除湿器を作れば、エアコンの冷房運転より大分少ない消費電力で除湿が可能になるはずです。
多くの方が持っている「除湿の方が冷房より経済的」と言う考えは本来正しいのです。
問題はエアコンがそもそも除湿の為に最適な構造になっていないのです。エアコンは冷暖房の為に最適化されています。我が家では冷房を年間2.5ヶ月、暖房を4か月使用します。除湿だけが必要な期間は多くても3週間程です。この3週間の為にエアコンをこれ以上複雑にするべきではないと思います。気密性を上げ、全熱交換機を使えば必要除湿量は半分ほど(1リットル/時→0.5リットル/時)に減らすことが出来ます。全熱交換機は梅雨時だけでなく、夏と冬の住環境改善と省エネに貢献してくれます。
今まで1時間当たり1リットルの除湿を例に説明してきましたが、これは全熱交換機がない場合に必要な除湿能力です。 1時間当たり0.5リットル の除湿であれば、今ある凝縮熱を使って再熱除湿するエアコンで良しとするべきかもしれません。